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横浜家庭裁判所横須賀支部 昭和30年(家イ)24号 審判

国籍

日本

住所

横須賀市○町○丁目○○番地

申立人

堀田京子(仮名)

(特別代理人 徳田文子(仮名))

国籍

アメリカ(ワシントン州)

住所

横浜市○区○○町○○番地

相手方

ウイリアム・ピカツト(仮名)

外一名

主文

相手方ウイリアム・ピカツト(仮名)エリザベス・ピカツト(仮名)と申立人堀田京子(仮名)との間に昭和二十九年八月○日○○市長に対する届出によりなした養子縁組の無効なることを確認する。

事実

申立人は主文と同旨の合意に基き右合意に相当する審判を求め、その申立の実情として次のとおり陳述した。

申立人は戸籍上昭和二十九年五月○○日申立外父高田勝一、同母高田良子間の弐女として出生し同年八月○○日○○市長に対する届出により相手方ウイリアム・ピカツト同エリザベス・ピカツトと親権を行う父母である申立外高田勝一、同高田良子の代諾の下に養子縁組をなした旨登載せられてある。

然るに申立人は申立外高田勝一、同高田良子間に出生した子ではなく真実は申立外堀田春枝と米国駐留軍々人某との間の子であり昭和二十九年十二月二十五日御庁において申立人は申立外高田勝一、同高田良子の子でないことを確認する旨の審判がなされ、該審判に基きその旨の戸籍訂正をなし申立人は出生届出義務者がないため申立外堀田春枝の子として出生の届出がなされたのである。

然らば前記養子縁組は真実の父母でない申立外高田勝一、同高田良子の代諾によつてなされたもので、当事者間に縁組する意思がなかつたことに帰するから右養子縁組は無効である。

よつて相手方、ウイリアム・ピカツト、同エリザベス・ピカツトと申立人堀田京子との間の前記養子縁組の無効であることの確認を求めるため、本申立に及んだのである。

(略)

相手方等はいづれも右と同旨の実情を述べ、甲号各証の成立を認めた。

理由

当家庭裁判所の調停委員会の調停において当事者間に主文と同旨の合意に基き右合意に相当する事情の合意が成立しており、これに当裁判所が真正に成立したと認める甲第一、第二号証(各戸籍謄本)証人長田太一郎、同高田良子の各証言、相手方ウイリアム・ピカツト(仮名)の本人尋問の結果を併せ考えると申立人の申立た前掲事実はすべてこれを肯認しうるに足る。従つて相手方ウイリアム・ピカツト、同エリザベス・ピカツトと申立人堀田京子との間に昭和二十九年八月○○日○○市長に対する届出によつてなされている養子縁組は当事者各自の本国法によりそれぞれ有効なることを必要とするにかかわらすその一方の養子である申立人堀田京子に縁組する意思がなかつたのであるから同人の本国法たる日本国民法の実質的成立要件を欠缺し他の養親である相手方ウイリアム・ピカツト、同エリザベス・ピカツトの本国法たる米合衆国法の効力の如何を問わず前記養子縁組の無効であることは明らかである。

よつて右の事由に基き申立人が相手方ウイリアム・ピカツト、同エリザベス・ピカツトとの間に形式的に成立した外形を備えている本件養子縁組の無効であることの確認を求める本申立は理由があるとして認容せられるべく家事審判法第二十三条法例第十九条に則り主文のとおり審判する。

(家事審判官 石原辰次郎)

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